ここ最近、お兄ちゃんに忠実だった。


そのおかげで、家政婦さんに隙が出ていた。


数分ごとに様子を見に来ていた家政婦さん。


今では2時間に1回。


お兄ちゃんの部屋にいるといえば、何も言われないし干渉もしない。



---脱走できるチャンスだと思った。



この機会を逃したら、霧生に会えなくなる。


会って全てを謝りたかった。


許してくれないかもしれない。


だけど、霧生に一瞬でもいい。


『あたしのせいで、ごめんなさい。』


それだけ言いたい。


元気になった霧生の顔が見たい----。


その強い思いが、あたしの原動力になった。


その為にも、あたしはここから絶対に脱走しなきゃ。


乾いてひび割れた心が、水を得たように潤っていく。


霧生が、あたしに生きる力を与えてくれた。


お兄ちゃんの様子がおかしかったのも、霧生がこの街に戻ってきたのを知ったからに違いない。


それが分った今、あたしがすべき事。



ここから逃げ出す事!!