「綾瀬唯が誕生したの、去年の今日だぜ?!」


「そっちか!!」


もう、そんなに経つんだ…。


去年の今頃、亮太に偽造の身分証を作ってもらって、『蒔宮紗羽』から『綾瀬唯』に変わったんだ。


そんな事、すっかり忘れていた。


「覚えてたの?!」


ビックリするあたし。


「当たり前だろ?だって、大事な唯の誕生日だから。」


照れて笑う尚吾。


グイッ!!!


勢いよく尚吾の胸倉を掴んだ。


キッと睨み上げる。


その目には、大粒の涙が溢れている。


「もう!!何かあったのかって、どれだけ心配したと思ってるの?」


お兄ちゃんじゃなかった事に、安心して涙が止まらない。


「ごめん。ごめん。サプライズのつもりだったんだけど…。」


苦笑い。


「…バカ!!!」


ドンッ


強く尚吾の胸を叩いた。


にっこり笑うあたしに、今度は照れ笑い。


涙を拭いてソファに座った。


たった1本のロウソクを吹き消すと、ソファの横に置いてあるスタンドライトを尚吾がつけてくれた。


「このケーキ、オレが作ったんだぜ。」


「本当に?!」


意外だ…。


尚吾が、ケーキを作れるなんて。


しかも、めちゃくちゃ上手い。


…見た目は。


だから、てっきり買ってきたのかと思った。