「いいんですか?彼女なんて狙ってしまって…。恐れ多くないですか?」


「いいんじゃないですか?あんな遊び人でよかったら。」


そう言いながら、ソファから立ち上がるとドアノブに手をかけた。


これ以上、尚吾の話をして笑っていられる自信がないから。


「もう、帰っちゃうんですか?」


寂しそうな目で見つめる。


「うん。尚吾から連絡きたら、ここに来るように言っておくね。」


「はい!!ありがとうございます。」


元気のいい返事を聞くと、笑顔でドアを閉めた。


バタン…


ドアを閉めると、ドアにもたれかかって笑顔が消えた。


頑張って笑ったホッペが痛くて。


うつむきながらしばらくドアにもたれかかりながらしゃがみ込んでいた。


ミュウのあの笑顔を見ると、どうしても良心が痛んで騙そうとしてるわけでもないのに嘘をついてしまう。



そして、尚吾が好きって気持ちが芽を出してきて。


自分がどうしようもなくなっていく。



---あたしは、人を好きになれない。


ならないって決めたのに。


あたしとなんかいるより、ミュウといた方が2人が幸せになれる。


これ以上、誰かに辛い思いはして欲しくなくて。


あたしには、辛いのに慣れた心があるから。


それなのに、いまさら尚吾の隣にいる自分を思い描いちゃったりして。



お互いに言葉はなくても、ただ隣にいるだけで分かり合えてたのは、奇跡だったのかもしれない。