秀が凄く心配してくれていた。


だけど、忘れかけたはずの霧生への気持ちを消化したくて。


ひとり呆然と帰った。


-----家の玄関を開けると、ダダダダっと、ものすごい勢いで、慌てた顔のお姉さんが走って迎えてくれた。


「やっぱり、尚吾君と喧嘩しちゃったのね?」


落胆しながら言った。


「…なにがですか?」


何で尚吾の話が出てくるのか?


秀から何か聞いたのか?


不思議に思って…。


「昨日、酔い潰れたじゃない?
尚吾君が部屋に連れていってくれようとしたんだけど、私起き上がったとき転んじゃって、尚吾君のシャツ破いちゃったの。
それで、着られなくなっちゃったんだけど。朝、裸でいたから唯ちゃんに誤解させちゃったと思って。」


落ち込んで話すお姉さん。


「そうだったんですか。」


肩の力が抜けた感じ。


尚吾とお姉さんが何もなかった…。


誰とでもヤレるわけじゃないんだ。


どこか安心している自分がいた。


それなのに、今は霧生が死んだショックの方が大きくて。


素直に喜べない。


「大丈夫です。あたし、尚吾と喧嘩したわけじゃないですから…。」


淡々と話す。


「本当に?…でも、目が腫れてるし…。」


「……今日、秀から聞いたんです。………あたしにっとて、凄く大事だった人が亡くなったって…。」


思い出しただけで、涙が溢れてきた。