「3年もいて知らなかったの?まあ、あたしの存在、抹消されてるから。」


「…ごめんなさい。知らなかったとは言え。」


完全に凹んだ。


「じゃあさ、お詫びにご飯食べに連れてって。」


顔を覗き込みながら、からかうつもりで言った。


「いいですよ。今日、日勤だし。」


意外な返事。


だいたい、今までの病院の人間なら、挙動不審になるのに。


あたしと関わったら、クビになるから。


だけど、あたしを疎ましく接すると、お兄ちゃんに睨まれる。


異常なくらいお兄ちゃん溺愛の院長。


お兄ちゃんが嫌がるヤツもクビだから。


さすがに、お兄ちゃんはそんな傲慢(ごうまん)な事は止めるけど…。


そんなわけで、あたしが来るとみんな困惑する。


それを見てるのが楽しかった。


なのに3年も働けば、知っててもおかしくないのに。



霧生は困惑もしない。



そんな霧生の不思議さに引っかかったのか?


霧生とご飯を食べに行く事にした。


お兄ちゃんに後ろめたかったけど---。


たまには、お兄ちゃんに心配させよう!!


そう気持を切り替えた。



約束は7時に病院の職員の駐車場。