尚吾が助けに来てくれて逃げられるのが嬉しいはずなのに…。


体が震えて動けない。


うつむいたまま、顔を上げられない。


恥ずかしくて…。


尚吾の顔が見れない。


「今のうちに逃げて。お兄ちゃん病院に呼び出されちゃったから。」


泣きそうな顔をして笑った。


「唯はどうするんだよ?」


「…………。」


首を横に振った。


尚吾は、そっとあたしの頬に手を当てようとした。


パッ!!


ビックリして反射的に、かわしてしまった。


「ごめん…。あたし…。」


「唯が謝るなよ。」


「来てくれてありがとう。」


「唯も一緒に行くだろ?」


「あたしは、もう何処にも行く所ないから。」


こんな姿を見られて、やっぱり尚吾と一緒になんていられない。


言葉ではいくらかっこいい事を言えても、現実を見ちゃったら軽蔑するに決まってる。


「ほら、急がねぇと帰ってくるだろ。」


あたしの手を掴んで引っ張った。


「ダメだよ。あたしは行けないよ。」


「なんでだよ?」


寂しそうにうつむくあたしに、どうしていいか戸惑ってる。