そこには、力強く包丁がベッドに刺さっていた。


なんで?

どうして?


あたしには、何が起こったかなんて分からない。


ただ、霧生がやった事と、霧生の姿が無くなっていたことだけが分かる。

なんでこんな事したの?


あたしの事、好きだったんじゃないの??


あのキスは、そういう意味じゃなかったの???


こんな事するなら、何であたしに好きって言わせたの???


不安と悲しさで、涙が溢れて止まらない。


しばらく仰向けで動けずに泣き続けた。


時間なんて分らない。


ただ、うっすらと日が昇ってきたのは、窓に差し込む光で分った。



朝が来たんだ…。



あのまま霧生は帰ってこなかった。


あたしは、ただ声も出せず、泣き続けるだけだった。


泣きつかれて気だるい体を起こすと、鏡を見なくても自分で分るくらい目がボッコリと腫れてる。


顔を洗って着替えると霧生の家を出た。


マンションの外に出ると霧生の部屋を見上げた。


霧生、また冗談だよって言って、帰ってきてくれっるよね?


このままじゃ、霧生のイジワルなんて思えないよ。


あたしが我がままだから??


ねえ…もう、いなくならないって約束は、守ってくれるよね?


ポタポタと、また涙がこぼれてきた。


うつむきながら手で口を押さえ、声が出るのをこらえて泣きながら帰った。