だからあの時、あたしが大人だったら…


なんて言ったんだ。


「…あたしは…あたしは、霧生が居なくなって、悲しくて探して、謝りたくて…ずっと…ずっと…。」


セキを切ったかのように、あたしが喋りだす。


ボロボロ涙は止まる事を知らない。


霧生は何も言わずに抱きしめてくれた。


「ありがとう。ごめんな。」


そう言って、優しく頭を撫でてくれた。


霧生の温かさ。

霧生の匂い。

霧生の心臓の音。


全てが懐かしく嬉しかった。


「もう、どこにも行かないよね?」


涙をいっぱいに溜めながら、霧生の顔を見上げた。


「…ああ。」


ニッコリと霧生は笑った。


その晩、どれくらいぶりだろう?


霧生と一緒にご飯を食べに行った。


雨も止んで霧生のバイクで出かけた。


久しぶりのバイクの後ろは、懐かしさよりも霧生がここにいるっていう実感できる嬉しさでいっぱい。


前よりもしっかりと抱きつき、離したくはなかった。


着いた先は、やっぱり霧生だ。