「妊娠でもしてみろ。蒔宮の正当な後継者だ。」


秋洋の肩を笑いながら叩いていた。


それを聞いた時、なんてかわいそうな子かと思った。


中学生が親の財産争いのひとコマでしかすぎないなんて。


かわいそうって気持から、段々と興味が沸いてきた。


一体、紗羽って子はどんな子なんだろう?



噂では聞いていたよ。


やたらヒネくれた中学生がいるって。


しかも院長が嫌ってるから、関わったらクビが飛ぶって。


…それからしばらくたった時だった。


紗羽がナースステーションに居たのは。


本当にわがままな子だと思った。


だけど何も知らない無邪気な笑顔が、いつも元気をくれた。


初めて会った時は、興味本位だったはずなのに。


ヒネくれてたけど純粋で真っ直ぐで。


いつも屈託なく笑ってて。


オレの予想を遥に超えてたいい子だった。


噂話なんてその程度か…


なんて思っていたけど、大間違いだった。


紗羽への執着は、一層激しくなるのは分っていた。


秋洋も自分はどんなに優秀になっても認めてもらえない。


所詮は他人なんだと言われている様な物だったから。


元々異常な嫉妬心はあったから。