スピン☆オフ

「しっかし、あの普通のアパートから、こんないいマンションに住んでるなんて。」


ブツブツと、独り言をつぶやきながら感心していた。


1時間ウロウロと歩き回り、一時間ソファで待ってたが、若い女の人が2~3人出入りしただけ。


いつの間にか、外は雨が降り出してる。


今日は、仕事なんだろうなぁ…。


明日、また来ればいいかな?


諦めて帰ろうと、ずぶ濡れ覚悟で外に出て歩き始めた。


なんとなく後ろを振り替えるった。


見た事のある男の人が傘を差しながら足早に歩いてきた。


秀がくれた、写真で見た霧生だ!!


「霧生!!!」 


大きな声で呼ぶと、急いで駆け寄った。


男の人は立ち止まり、ジッとこっちを見ている。


思いっきり抱きつくと、涙が溢れて止まらなかった。


「会いたかったよ!…ずっと探して…。」


霧生である事を確認するかのように、両手で顔に触れた。


「チワワ…チワワなのか?」


ガサッ……。


ビックリして傘を落とし、あたしの頬を両手で掴んだ。


「…そ……だよ…。」


涙で上手く話せない。


泣き崩れて立てないあたしを、霧生は強く抱きしめてしっかり支えてくれた。


あたしも、強く強く抱きしめた。


それはまるで、引き離された恋人同士が、再会できたかのような光景。