尚吾のいるビルに着くと、呼吸を整えながら階段を登って行った。


フロアのドアに手をかけ、大きく深呼吸すると勢い良くドアを開けた。


「おっ!!!」


ビックリした顔の尚吾が1人立っていた。


どうやら、いつものメンバーはいないみたい…。


ツカツカとフロアに入って行くと、尚吾の目の前に立った。


「ねぇ、偽造の身分証作れない?」


ジッと目を見ながら、開口一番直球で聞いた。


「亮太なら作れるけど…。どうしたんだ?」


いつもと変わらない態度。


てっきり、あの事で軽蔑されてると思ったのに…。


「あたしが、作って欲しいんだけど。」


「うぁ~ん。いいけど。用途は?」


「保険証と学生証。出来るんだったら、戸籍も欲しいくらい。」


「戸籍は微妙だな。なんでそこまで?」


「…。」


理由なんか言えなかった。


尚吾の目を見たまま、言葉が出てこない。


「…わかった。亮太にメールしておくよ。」


すぐに携帯を取り出し亮太にメールをしてくれた。


「ありがとう。」


その言葉が精一杯。


そのまま帰ろうと、一歩踏み出した時。


「何でオレに頼んだの?」


意味の分からない事を、不思議そうな顔をして聞いてきた。