「そっか…。でも、尚吾は紗羽ちゃんが大好きだって事は、覚えてて欲しいな。」


「あたし…あたしは…。」


言えるはずなんかない。


人を好きになれないことなんか。


好きになったらいけない。


また、お兄ちゃんに見つかった時、その人がどんな目に会うのか?


想像しただけで怖くて仕方ない。



同級生や先輩。


冬槻先生や霧生みたいに。



それだけじゃない。


周りのみんなにも、どんなに辛い思いをさせるか?


それを思ったら、恋愛なんて出来る立場なんかじゃない。



これ以上、誰かを失くしたくない。


傷つきたくなんかない。

傷つけたくなんかない。


まるで、逃亡者のように生きていかなきゃいけないなんて。


それを理解してもらうって事は、全部を話さなきゃ。


だけど、そんな事できない。


うつむいて考えてるあたし。