彼氏は辞めてしまった後だった。
「心残りがあったんだろうが、オレがイロイロ調べてる間に、一度町に戻ってきてそれ以来消息は分らなくなってて。近所のおばさんの話じゃ、お姉さんの彼氏はショックのあまり自殺したって言ってた。」
今にも消えそうなお兄さんの声。
あたしの体は、震えて止まらなかった。
あたしの知らない所で、そんな事になっていたなんて。
全部、あたしのせいだ…。
あたしの興味本位から始まった霧生くんとの関係が、こんなにたくさんの人を苦しめていたんだ。
そう思ったら、体中が震えて止まらない。
それに霧生が自殺してた?
もう会う事も出来ないなんて…。
「…ねぇ、お兄さん。」
小さくつぶやいた。
「どうした?」
お兄さんはうつむいていた顔を不思議そうに上げた。
「その…どこまで犯人分ったの?」
「犯人どころか、手がかりすら掴めなかった。唯一つかめた情報は、お姉さん達の勤務していた病院は、ちょっと変わってるって事だけ。」
「…ちょっと…変わってる?」
虚ろな目でお兄さんを見た。
「あぁ…。院長の娘に関わると、大変な目に会うって事。」
「…ご…ごめんな…さい…。」
虚ろな目から、いつの間にか涙が溢れていた。
「どうしたんだよ?キミが泣く事ないだろ?」
お兄さんは、慌てながらティッシュを差し出した。



