あたしは蒔宮紗羽〔マキミヤ・サワ〕。


田舎の大病院の一人娘として産まれた。


両親は跡取りを熱望していた。



それも男の子を…。



だけどあたししか子供には恵まれなかった。


両親は仕方なく施設から養子を引き取ってきた。


---それが、あたしが3歳の時。


引き取ってきた男の子は13歳。


名前は秋洋〔アキヒロ〕。


両親の愛情は全てその男の子に注がれた。


異常なくらい。


何処へ出掛けるのもお兄ちゃんは一緒。


あたしは連れて歩く所か、存在自体を抹消された。


家に誰もいなく寂しくて、帰りを待ちわび玄関で寝てしまう。


洋服一枚買って貰えない。


話も聞いてもらえない。


家で顔を合わせても空気のような扱い。


あたしは死んだと葬式まであげたくらい。


あたしが生きている事を完全否定した。


…そんな生活。


だから玄関で寝る変な癖がついてしまって。


お金はあれど愛情なんかなかった。


…どんなに辛かったか。