「ん、飲め」 「で、でも……」 「遠慮すんな。別に金よこせとか言わねぇよ」 「そうじゃなくて、その……」 私は困った顔で後ろ手をモゾモゾと動かす。 これじゃ、受け取れないよね。 「あー……」 彼はそこで気付いてくれた様で、缶を置くと固定されていた腕を解いてくれた。 そして、改めて缶を手渡された。 あったかい紅茶だ。 彼はコーヒーを取り出すと飲み始めた。 「なぁ、」 「―――えっ?」 私は自由になった両手を温めながら、どうやって逃げようか考えていたので、少しドキッとしてしまう。