「そうだ…久しいと言えば良いか?」
穏やかな口調の中に黒を感じさせるオーラで桜志郎は惣をソファーから見上げる。

「ああ…で…穂群は?」
見抜けなかった自分に苛立ち、惣の口調は太々しい。

「心配か?あの化物が…」
桜志郎はゆっくりと立ち上がり惣の前に立つ。
その様子を怯む気配も見せず、同じ位に冷たい表情で惣が構える。

「いや…スキが無い位にキリキリした穂群だったんだろ?アンタの墓か買い物だろ…」
冷たい表情から一気に表情を崩す。

「な…」

「だから…権の弱い俺の所に現れた…って所か?」


「惣?こんな所で寝ているのか?」
自分を覗き込む穂群の顔が認識出来た。

「穂群?」

「早かったな…稽古は終わったのか?」

「穂群…本当に穂群?」
起き上がった惣は目の前の穂群に異変を探そうと構えつつ見つめる。

「本当…とは?」

「いや…邪悪な穂群が会いに来たんだ…」

「邪悪?まさか…桜志郎殿か?」

「うん…そのまさか…けど…こんな疲れるんだな…」
穂群が媒体となりモノを覗き見た事は、何度もあった。


「何か言われたのか?されたのか??」
ソファーから身を起こした惣の隣に座る。

「されて無いよ…多分あれ…桜志郎では無いと思う…」

「どういう事だ?」

「なんだろ…狐や狸みたいな…浅はかな部分を感じる。桜志郎なら既に何かしら手を出してると思うんだよね…手…ってより精神攻撃みたいな」