「…良く、普通に食えるな…」
都織が笑う。
「馨ばぁちゃんのご飯久々だからな…」
惣の言葉に台所で都織の祖母が嬉しそうに微笑む。
「通しだとキツイな…」
手を合わせた都織が箸に手を伸ばす。
「そうだな…この位の方が忘れられる」
「何を忘れるんだ?振りや台詞か?」
「いや…自分だよ…集中とは少し違うかな?」
「自分を忘れる…なら集中なんじゃないか?」
「…都織は人と比べられるのはどうだ?」
同じ立場の都織にもあるだろうか?
惣は都織が咀嚼を終え答えるのを待つ。
「結構、好きだな…」
想像しなかったが都織らしい答えが来た。
「そうなのか?」
「最近、ドラマが多かっただろ?舞台だけだと、じいちゃんや先代達…まぁ、身内にしか比べられる事は無いけど…ドラマだとさ…アイドルって呼ばれてる人とも比べられる訳よ…」
「身内は良いのか?」
「比べるに値する対象になったんだ…って解釈してるよ」
「アイドルは?」
「まぁ、人気もニーズも勝てないだろうけど…一瞬でも喰ってやろうと思ってるよ」
「喰ってやる…か…都織らしいな」
思わず惣は笑う。


