「惣?」
黒髪を振り乱し、飛び起きた穂群は、
手探りでスタンドのスイッチを探り当てた。

「…起こしたか?」
眉間に深いシワを刻んだ惣が眩しそうに返事をする。

「ここは…私の部屋だよな?」

「そうだよ…」

「何故、惣が??」

「…いつもの穂群の真似…」
小さく惣が笑ってみせた。

「私の?」
穂群は自分が惣のベッドに潜り込む時の事を思い起す。

「そうか…ならば追い出す訳にも行かぬな…」

「穂群は俺の評価って聞いた事ある?」

「専門誌の演目のレビューとかか?」

「いや…もっと、お客さんの声に近い物だよ」

「客席に居る事が少ないが…眞絢に似ておる…学業優先なのが寂しい…とは耳にした」

「やっぱりか…」

「やっぱり…とは?」

「ごめん穂群…現れたのは本当に俺だったのかも…」

惣のいきなりの言葉に再び穂群は飛び起きる。
「な…何を言っておる?寝ぼけたか?」

「いいや…本気だよ」
惣は穂群の反応を鼻で笑う。

「でも…なるべく出ないで済む様に気を付けるからさ…出て来てもテキトーに相手しといてよ」
惣は言い終わると同時に安心した様に寝息を立て始めた。