「俺がねぇ…」
先に穂群を休ませ、惣と眞絢が差し向かう。

「珍しいよね…あんなに取り乱すの」

「本当に俺だったりして…」

「そうだね」

一瞬、グラスに落とした視線を上げ、肯定する眞絢を二度見する。
「え?どう言う事?」

「真似…とは違うか…上手く言えないけど…憑依」

「憑かれてるのか?」

「どの演目の惣も、癖が出てなくて良いんだけど…古い物から最近のまで映像を観て勉強するだろ?」

「うん…台本と一緒に渡されたりするし、兄ちゃんの観て来い…とか」

「それだよ…惣は映像の中の名優達にそっくりなんだよ。憑依されてるみたいに。」
穏やかな口調で眞絢は言う。

「そうなのか?確かに何度も繰り返して観るけど…」

眞絢が自室に戻ろうと立ち上がる。

「良く言えば無垢なんだろうけどね…ここからは自分で考えるしかないよ。おやすみ」