「ただいま」
リビングに入って来た穂群に先に声を掛けたのは眞絢だった。

「ああ…おかえり…先に済ませたぞ」
髪の雫を押さえながら答える。

「うん…惣も入るんだろ?俺は呑んでるから後ね」
リビングを後にする惣を見送った眞絢が続ける。

「桜志郎さんだったの?」

「解らない…」

「どうして怯えたの?」
トニックウォーターを注ぐ眞絢の顔を穂群が覗き込む。

「…惣だった…」

「似てるからでしょ?」

「違う…惣だったのだ…」