「ここで休む…」
そう言って惣のベッドに潜り込んだ穂群と、迎え入れた惣だったが言葉は少ない。

「…そうだ…紅筆…都織が喜んでた…明日、穂群も稽古場に来る?」

「…そうか…良かった…いや…稽古場には行かぬ…」

「うん…分かった…」
優しく穂群の髪を撫でる。

「髪…短くなって良い事も出来た…」
惣の腕に潜り込みながら穂群が笑う。

「何?」

「乾かす時間が短くなった…まぁ…寝癖
には困らせられているがな…」

「そうなんだ?」
数々の術を施し、惣を使役する陰陽師とは思えない穂群の悩みに思わず惣は笑う。

「なんだ?何か変な事を言ったか?」
顔を赤らめて穂群が詰め寄る。

「いや…」

「なら、何故に笑う?」

「ん?穂群がカワイイな…と思って…」

「なっ…」

「いや…本当に…穂群の正確な年齢は知らないけど…大学の女の子が取る様なリアクションするよね?」
惣が穂群との一番古い記憶では、今よりも冷たい目をした穂群が居る。

「もう…休む…」
惣の言葉に顔を赤らめたままの穂群が、寝返りを打ち、背中を向けた。

「ん?もしかして照れたの?」
少し面白がって惣が穂群を覗き込む。

「…」
穂群の返事はない。

「…こっち向けよ…そっちばっかり向いて寝るから右側に寝癖が付くんだよ」

最後まで笑ながら惣はスタンドの灯りを消した。

明日から、都織との稽古が始まる。