穂群は桜司郎の墓前に佇む。

(桜司郎殿…また、私を一人にするか?)
もう、何度も同じ気持ちを味わい、同じ問いを墓前にぶつける。

ただ、穂群の念が、今までとは明らかに違っている。
桜司郎が応えているかの様に吹き荒ぶ風も、穂群の短くなった髪は靡かせない。

(また…見送る事になるかの…)
隣に並ぶ比較的新しい墓石に触れると、酒を供え背を向け歩き出す。