「都織の?」
「惣は都織のじいちゃんの指導ね」
台本を受け取りながら眞絢が役者の顔を見せる。
「兄ちゃんの指導が都織?」
世の中が持つというライバル視の話を思い出して惣は笑う。
「あの方は女形に定評があって今でも姫役の当たり役が多いけど、土蜘蛛の智疇(ちちゅう)の名手なんだよ」
「あの、じいちゃんがか?」
「まぁ、最近、土蜘蛛の演目が少なかったから知らないか?明日から都織の家で稽古ね」
「分かった…」
「それまでにしっかり台本入れて、映像観て」
「分かった…穂群は?」
「出かけてる…多分、文七の決定を知っただろうから…」
惣は静かに頷く。


