和泉まどかはやんわりと笑うと飛鳥の腕にそっと触れた。



「間宮さん、そろそろ行きましょう」



「あっ……あぁ。じゃあ、失礼します」



ふたりは仲睦まじい様子で奥の個室へと姿を消した。



そのあと、興奮覚めきらない皆をよそ目にあたしだけ沈んでいた。




彼氏の浮気現場に遭遇したんだから無理もない。




「やっぱり飛鳥とまどかが付き合ってるって噂本当だったんだね!!!」



「お似合いだよね~。美男美女!」



「俺まだ鳥肌たってるし!!」




頬を染めて騒ぎ立てるみんなに気付かれないようにそっとため息をついた。



「ごめん。あたし、先帰るわ」



まだほんの少ししかお酒を口にしてなかったけど、律儀に千円札をテーブルの上に置いて席を立った。



とても飲む気分になんてなれない。



「さ、沙依!?」



「ごめんね」


また謝ってあたしはその場をあとにした。


そして帰るんだ。


飛鳥がいないマンションへと―――。