ピンポーン。
「いらっしゃい。さ、あがってください」
「お邪魔します」
桜のお母さんは明るく出迎えてくれた。俺は靴をきちっと揃えて家にあがり、そのまま2階の桜の部屋へ案内される。
「おかえりーなんか言われた?」
ベッドの上で座っている彼女、桜が問いかけてきた。なんかおかえりって言われることに違和感を感じたが、しかたないことだろう。
「ホームランは打って良いが人の家の窓は割るなだってさ」
「それって無理じゃない?意識して狙えるもんなの?」
「無理だ。意識してたら俺の場合は凡フライになりかねない」
「やーい。へたっぴー」
下から覗くような姿勢をとった桜が、顔に小悪魔のような笑みを浮かべ、俺を見上げる。
「うるせ!狙える方が上手すぎるんだ!」
「御幸は狙えるようになるんしょ?」
「そうなれたらプロになれるぜ?」
「じゃぁ御幸はプロだね!」
なんて満面の笑みを浮かべた桜が言った。そんな顔をしたら否定しずらい。それにそんな無邪気な笑みを浮かべている桜を裏切りたくなかった。
「なってやるよ!そんで観戦に来た桜の所に打ってやるよ!」
「それだと私が怪我すんじゃん!?」