短編集



びっくりして拍手の聞こえる方をみると暁君が立っていた。

「おはよー最後が中心だと気持ち良いよな」

さっき思ったことを言われる。

「たまたま来てみたらお前がいたわけ。朝練は一人なんだ」

「自主練。いつからそこに?」

「矢を二、三本射った後ら辺かな。その音につられたわけだし」

そんな早くから。

全く気づかなかった。

それだけ集中できていたらしい。

「暁君はなんで早くいるの?」

「ん?学校にか?」

こくん、と頷いて見せた。

すると困惑と、呆れた顔が混じったような顔、私を見てくる。

「実は俺元野球部で投手やってたんだ。自分で言うのもあれだが、とにかく打たれなかった。一年なのにベンチ入りまでして、二番手投手だった。でもそれで俺は肘を壊した。バカだよな。で、野球部の朝練を見学するために朝早いんだ」

「そうなんだ。」

とても長く話してくれたけど、私は一言でしか返さなかった。

ここは普通どういう言葉をかけるなのだろう?

答えはでてこなそうだから私は弓矢の片づけを始める。

「お前良い奴だな」

「え?」

あの返事の仕方でなんで良い人?