真冬の凍える寒さの中、野球の練習試合を行った。

手はかじかみうまく動かず、キャッチボールをすればグローブをつけたとしてもボールをとると痛いし、バットを振ってもやはり手が痛くなる。

我が野球部の監督は厳しく、こんな中のアップも手を抜いたら、全力で叱られ、試合後居残り練習をさせられるという鬼監督だ。

俺はまだくらったことはないが、とにかくきついらしい。

しかもこの寒さの中、居残りさせられるのは、まっぴらごめんだ。

というわけで全力で行う。

ま、その鬼監督のおかげで、この野球部は他校から強豪と呼ばれ、どの大会でもベスト4に入る力を持っている。

で、俺はこの試合で初スタメンが決まっていた。

先輩たちと同じグラウンドに立って戦えることはとてもうれしいが、俺のせいででれない先輩もいるわけで、プレッシャーや、申し訳なさを感じているのも確かだ。



試合が始まる。


1回から打線がつながり、ノーアウト二、三塁で七番の俺に回ってきた。

「気楽に打ってこい」

あの鬼監督とは思えない優しい言葉だった。

初球、内角高めのストレート。

体にたたき込まれてきたスイングを思いっきりしてみた。