寒い冬の夜。それはほとんどの人が、手袋やマフラーをして外を歩き、雪が降るのではないかと期待、あるいは不安を抱く様な夜。そんな中俺、美原 春野は1人手袋やマフラーをせず、ある場所に行くために歩いていた。財布だけをポケットに、あと昔ながらの缶に入ったドロップたちを持ち歩いている。そのドロップたちは歩く度にその揺れに合わせてカラカラと一定のリズムで鳴っているはずだが、車の通る音や、人のざわめきのせいで聞こえてはこない。
 今は7時を回ったところで、大人だったら普通に歩いていてもいい時間だろう。しかし、俺は高校生だ。別にダメではないが、余程のことでない限りこの時間に今俺が行こうとしているところにはいかないだろう。大抵、不良のような学生のたまり場にもなりうる場所だし。まぁ俺は暇だったから行くのである。どうせ今から行く場所にたまる学生はちゃらちゃらした奴らにしか突っかからないし。
 まぁもう予想もつく通り目的地はゲームセンターだ。夜は暇だから金に余裕があればこの時間に行っている。やりたいものがあるわけではないが気分でゲームをやっている。学校でも一緒に行くような友人はいないから自慢するような腕前もいらないし。
 

 ゲームセンターが見えてきた。周りに建物が少なく、建物自体がとても明るくライトアップされているため、幻想的な印象がある。


 今日この日から学校での生活が大きく変わるとは思いもよらなかったが。