短編集



ゴンドラに乗り込むと向かい合って座った。

「どうだった?今日は」

「よくわからない。でもなんかここら辺が軽くなった感じがする。」

そういって私は両手を心臓の在りそうな部分に置いた。

「そうか。それは楽しんでもらえたみたいだな」

と暁君は微笑を浮かべる。

「楽しい・・。」

そうなんだ。私そんなこともわからなかったんだ。


両親はとても厳しく、遊びに行ったことなんてなかった。

とにかく口から出る言葉は、勉強しろ。ただそれだけ。

小学校の頃から言われてきたから、友達と遊んだ覚えもあまりない。

感情を伝えることもしないで、親に言われたとおりにしていた。

結果中学でのテストは1位か2位で、高校も他県のとても良い高校へ行き、寮生活になると思った。

しかし、親は仕事で家を数年離れなければならなくなり、その間家を空けていくのは心配だからと、今通っている高校に通わされた。

まぁこの高校も県内ではトップ校だったんだけど。

おかげで少し気を抜くと5位まで落ちてしまう。

ちなみに弓道は中学からやっていて、集中力が付くから。とか言ってやらせてくれたっけ。