短編集



「少し窮屈でも大丈夫だよ?」

「いやでもさ、さすがにいろいろまずいってかさ」

「?」

何がまずいんだろう?

「何が?」

「なんでもだ」

よくわからない。

暁君は腕を張って私の周りに空間を作ってくれている。


その状況で次の駅へ。

駅に着いたってことはさらに人が増えるのである。

電車内はとにかく混んできた。

「すまん依紗那!」

「え?」

突然謝られた。

すると暁君の胸板が急接近してきた。

暁君の腕が耐えきれなくなったらしい。

さっきまであった空間がなくなり、暁君と密着している。

状況は私の足の間に暁君のどちらかの片足があり、暁君は一応ドアと手すりをつかんでいた。

暁君は気まずそうにそっぽを向いているが、私は特に何もせず立っている。

少し胸のあたりが苦しいが。

「すまんが依紗那我慢してくれ。」

「うん。」

そんな謝ることでもないと思うんだけどな。

2度目だが胸が少し苦しいだけだし。

「次の駅で降りるからそれまで耐えてくれ」

「うん。」

そっぽを向いている暁君はそういった。

なんでそっぽ向いているのだろうか。

気になったけど聞いてもしょうがないことだと思って聞かなかったけど。

私たちは密着状態のまま次の駅まで向かった。