背中に回された腕は
気遣ってか、傷を触らなくて
グッと拳を握ったのが、肌越しに
伝わってきた。




「 蹲って泣いて、ふらふら歩き出して
  ”やべーんじゃねーの”って
  思ったときには、お前を捕まえてた 」




程よい低さの声が、淡々と
あのときのことを語る。
私は相槌もうたずに
ただ黙って彼の腕の中で
話を聞いていた。





「 カズが、驚いててさ。
 ”犯罪者だな”って小突かれた 」





”違いねーな”と、ふっと
小さく笑う度に彼の口から漏れる
息が私の耳をくすぐる。






「 ・・・・お前を、帰したくない 」





抱きしめる腕の力が強くなった。