「 部屋一つあけておくし、
  助っ人も呼んでおくから 」




”ね?”って
屈託なく笑って、首を傾げてみせる。




”逃げる”ことをあまり意識は
していなかった。
一輝からリカのことを聞いた後は
”逃げていいのか”なんて
不安さえ抱いていたほど。




一輝は”逃げない”って言う
私の考えを一切許さない。
だから”逃げろ”って”逃げて”って
私に何度も何度も言い聞かせて
こうして、私に居場所まで
与えようとしてくれる。




「 一輝は、優しいね 」




散々泣いたのに、また涙が出てきて
ははっ、て乾いた声で笑った一輝が
涙を指を拭ってくれる。




「 俺は優しくなんかないよ 」




目を細めた一輝の声は
心なしか、小さい気がした。