私は何もわかってなかった。 お父さんがいなくなってから まだ間もない。 たった一週間であそこまで 壊れてしまった人に 苛立ちを感じた。 本当は、泣きたくて けど 泣けなかった。 私より深い悲しみを感じている お母さんの目の前で泣くのは 違う気がして。 箱の中に手紙を戻して 袖で涙を拭う。 お母さんの暮らしている 部屋をもう一度見渡すと 服で埋もれたベッドの上に お母さんの携帯があった。