「あ、そうだ」


昇降口で顔を真っ赤にして動けなくなったあたしを振り返って、爆弾をひとつ。


「貰ったチョコレートさー、明日休みだから一緒に食べよっか♪」


…昨日平坂を赤面させた仕返しなのかな。

やたら黒い影がちらついて見えるのはあたしの気の所為だと良いんだけど。

背後に冷や汗が伝うのを感じながら、負けず嫌いのあたしも頷き返した。

ここまで来たら引き返せない。

想いを伝えるだけで満足なんて綺麗ごとは取り下げる。


絶対に彼女になってみせるから!

………たぶん。



夢見ていた甘いバレンタインデーにはならなかったけど、甘くするのは今後の自分次第…なんてね。

気まぐれのように伸ばされた手を、強く握り返して。




さあ―――甘さも苦さも未知数な日々のはじまり、はじまり?



...fin.