咲々乃にはそれくらいがちょうどいいよ、と笑う平坂の顔が浮かんできて、この野郎と毒づく。

深呼吸をして、想いを静かに吐き出した。


「…好きだ、から、俺と付き合っ…て、ください…」


好きだ、付き合ってくれ、なんて言い慣れない言葉は上手く口に出来なくて。

やっぱりどこか格好がつかないまま。

でもそんな俺を笑うことなく、白波は俯いたまま俺の身体に体重を預けてきた。

さらりと流れる髪の毛から覗いた耳は燃えるように赤く染まっていた。


「はい、」


短い返事だったけど、それだけでもう俺は十分だった。

いよっしゃあああああああ!!!!!!

心の中でめいっぱい叫んでから、白波のおでこに軽く唇を触れさせた。

びっくりした白波がずざざっと転びそうな勢いで後退りしたのを笑うと、白波は拗ねたように眉根を寄せた。

顔は相変わらず真っ赤なまま。


「…咲々乃くんって意地悪なんだ」

「……そういうことにしとく、」