「…なぁ、白波。ちょっと良いか?」
やっとの思いで浮かべた笑みがひくひくと引き攣る。
やばい、俺、どんだけ緊張してんだ…!
いつの間にか手に力が入りすぎて、ぎゅうううっと皺がよるほど袋の持ち手を握り締めていた。
「え?あ…うん、いいよ」
白波もバレンタインのことだと解ったらしい。
万人受けするふわりとした笑顔を見せ、素直に俺の後に続いた。
どこに行くなんて全く考えていなかったため、結局教室を出てすぐの廊下で立ち止まる。
…ムードの欠片もねぇが、幸いにして人通りは少ない。
言え、言え、ありがとうって、言え…!
「あ、のさ、」
「チョコの話だよね?ごめんね、手渡しするべきだとは思ったんだけど…」
「…へ?あ、あぁ…!」
…うわ、完全に出遅れた。

