「じゃあねー咲々乃!頑張れ!」

「……お前こそ、明日は紙袋忘れんなよ」

「へ?なんで?」

「…なんでもだ!わかったな!」

「?りょーかい」


訝しむような視線を投げ掛けてくる平坂にシッシッと手を払い、どうにか追い返した。

……あそこまで自覚がないと女の子たちが可哀相だな。

きっと自分がもらったチョコはみんな、余り物の義理チョコとでも思ってんだ。

それかクラスメイト全員に配布されたばら撒き用のやつ。

たぶん少なくとも3分の1は本命だろ…。

見てるこっちが居た堪れない…。

そういうところが平坂の良い所、なのかもしれねーけどさ…。

……あいつは好きな子、いないのか?

俺ばっかり知られてて、あいつのことなんにも知らないとかムカつくしな…。

明日問い詰めてみるか…。


そんなことを思いながら、遠ざかる背中をぼんやり眺めた。