げんなりしながら、

「もう知れ渡ってるの?」
「うん、女子ヤバかった」

からから笑いながら笹木は言った。どういう風にヤバかったかは聞かないとこう…


人懐っこそうな笑みを浮かべている笹木を見ながら、そういえばクラスでも好きな子いたな、と思い出す。


「咲ちゃん有名人だね?」

千亜のその質問に乾いた笑いで返す。
ははは…


「あ、千亜。母さんがまた家に来いって。今日でも新しいレシピ考えたからまた、振る舞いたいんだと。」
「ほんとー?おばさんの料理好きだからまた行くね〜。」
本当に仲良いんだなぁ、と思っていると、

「今日は?」


笹木の顔がさっと険しくなった。



「…今日は…無理かなー」
「何でだよ。また図書委員かよ?」
「まあ、いろいろとね。」
「いろいろって何だよ・…また、危ないことしてんじゃないんだろうな!?」



千亜のはぐらかすような言葉に痺れを切らしたのか、大きな声で聞く。



「そんな声出さないで。他の人に迷惑でしょ?場所を考えよう?」
「また誤魔化すのか!」
「じゃあ、言わせてもらうけど。健くんは私の何なの?」



いつものほわほわした口調と違い、きつい口調で笹木に言い放つ。


「ッ…」



笹木は何か言おうとした口を閉じ、何も言わずにくるりと踵を返して走っていってしまった。



「え、ちょ…良いの?」



ていうか、こんな千亜始めてみた。



「いいの。私が何すんのも私の勝手でしょ?健くんはただの幼なじみ。」



そういった千亜の顔は少し悲しそうな気がした。


「今日、図書委員の当番なんだー。じゃ、やることあるから先戻るねー。」



すぐにいつもと同じような笑みを浮かべて、笹木が走っていった方向も私の方も見ずに走り去っていった。


「あー、もうっ!」



このお節介な性格もなおしたほうがいいかもなー、と思いながら
私は笹木を追いかけた――――…