立ち上がった私の手を痛いくらい引っ張る。
離したくない、
その気持ちが痛いほど伝わる。

「行くなよ、なんで行く必要があるんだよ?」


そのまま引っ張られて、腕の中にすっぽりと収まる。その腕は私のためにあるってことが嬉しい。
私がここで行かなくちゃ、その腕がなくなる可能性だってあるんだ。


「ハル、私はね、何度だってこの腕に戻ってきたいから、行くんだよ?」

「でも、俺は」


だだっ子のように口の中でももごもごする様子も堪らなく愛しい。
最初は全然興味なんてなかったのに、なのに、なんでだろう?
足りなかった部分の補充分、そんな感じ。

どちらに合わせているかなんてわからないけれど、体温が近付く感覚をもっと共有したいから。

今だけじゃない、これからのためにも。


「私は行くよ」

ハルの手をふりほどいて部屋を出た。


―…