「ていうか、あなた、馬鹿ねぇ…」
「何が、ですの?」

くっくっくっ、と喉の奥を鳴らす。こちらを見る眼が強い光を放つ。
今、アイリスの目の前にいるのは、咲ではない、サリサだ。

「こーやって、呼び出すだけでこの子に負担がかかるのよ?」
「!!」


アイリスの顎を持ち上げる。まるで恋人同士のキスのように顔が近づく。


「あらあら、傷ついた顔しないで?…あなたが自分本位なのは今に始まったことではないでしょう?」
「っ…」

「でも、罪悪感が咎めるから、あたしの魂のあるこの場所を守ろうとしてるんでしょう?…脆弱で弱虫なあなたにはそれしか出来ない、そうでしょう?」



アイリスの痛い所をつきながら、畳み掛けるように言う。アイリスは、違う、小さく口の中で呟きながら、へたりと座り込む。

確かにそれもあるけど、私は…!!


「弱虫は弱虫はらしく引っ込んでらっしゃい…一人でただ見てるといいわ………今日よ、今日かならず、乗っ取ってやるわ」
「サリサ様っ!!…私は」


私は、
何を弁解しようとしているの?
全部事実のくせに。


サリサはもう咲に意識を交代したのか、正常に呼吸をして、横たわる。

アイリスは静かに涙を流した。泣く資格なんてないのに。


―…