「私はあなたが欲しいのに、…まっさらで若いあなた…」

溜め息が零れそうな、甘い声が耳許で響く。彼女の声はこの世界にとてもあっている。溶けていきそうな心地良さを感じるのは、私が彼女の共鳴者だからだろうか。

「それで、私はやり直すのよ…。」

「サリサは、何をやり直したいの?」

冷たい白蛇みたいな手が私の頬に触れた。ゆっくりとその手が私の首ににおりていき、掴んだ。私はびっくりして息を止める。

「あたしは、不完全だから…彼の元には行けない。…体を伴っていないから…、けれどあなたが手に入れば」

ぐっとサリサの手に力がこもる。喉がしまってうぅっという音が私の喉からもれた。

「死んで、彼の元に行けるの」

やばい、頭がつまる様な感覚がして私は渾身の力を使ってサリサの手から離れた。私は咳き込みながら聞く。

「じゃあ、私はどうなるの?」
「同じ様に消滅してしまうかもね。…あたしの目的はそこまでだから、他に興味はないわ。まぁ、多季は他にあるようだけど…」


面倒くさそうに遠くを見るサリサは儚げで、喪うことは人をこんな風にさせてしまうのだろうと思った。

「あなたはこちらへ来てくれるわ、呼ばれ、吸い込まれ、…逃れることはー…」

出来ないわー


ー…