本と私と魔法使い

死ねば、魂はそのまま消える。なのに、自分のエゴのために、魂を縛りつけた。

「……あなたは、そんなに、までして…」


「君たちにわかるか、遺される者の悲しみが、私には、彼女だけだった。…お前の継ぎ接ぎだらけの魂を千々に砕いてやる…、アルザと同じ場所に行くことなんて許さない……!!」


さぁ、やれ、多季、煽るようにアイリスの頬に押し付ける。くっ、と多季は喉を鳴らした。

「うああああああああ」


喉の奥がひりついてしまうほど叫びながら、目の前に立つサリサの白く細い首に手をかけた。渾身の力で喉を潰そうとすると、最後の足掻きのように宙にサリサが腕をふる。


「っ…くぅ…、ぁ…許さない………」


こちらを睨み付ける目にはまだ光が宿っている。サリサは、ぴっ、と多季の頬を引っ掻いた。

「あああああああ」


最後に力を振り絞ると、首を握り潰していた腕に重みが増える。ゆっくり、首から手を離すとサリサが床に崩れ落ちた。

世界から音が消えたみたいだった、手にありありと残る感触が気持ち悪い。
ふらりと後ずさると、足がもつれて尻餅をついた。


嫌な夢だ、そう思って笑いたい。けれど、目の前に転がるサリサの、“遺体”が現実なのだと話しかけてくるみたいだった。


「よくやった」

ぽん、とアーベルの手が多季の肩に乗る。