本と私と魔法使い

アイリスは細心の注意を払いつつ奥の部屋まで忍び足で近づく。

何をみんな隠しているんだろう?
疑問がアイリスには多すぎた。


立ち入り禁止の奥の部屋にきっと何かあるとわかっていたのに知ることへの恐怖から入ることをしなかった。でも、少しでもこの流れを変えられるなら、

汗をかいた手のひらでドアノブを掴みゆっくりと回す。


ギイィッという噛み合わせの悪い音にびくっ、と肩を震わせた。

アーベルはいないようだ。安心して息をついたのもつかの間、
部屋のいたるところに貼ってあるものにびっくりする。


「なんですの…これはっ…!!」

隙間がないくらいびっしりと貼られたサリサによく似た女性の写真に絵。
花、ドレス、宝石…そるらが乱雑に散らばった部屋はある種の恐怖さえ覚えた。

ふとアイリスは足元に落ちている紙を手に取ると、

「ッ!!」


会いたい、会いたい、会いたい、会いたい、会いたい…

無数の走り書き、苛立っているのかぐりぐりと黒いインクで塗りつぶされたような殴り書き。


「どういうこと?」

一枚、また一枚、紙を拾い上げていると、首に突然の強い衝撃、目の前に星が散ったような気がした。

そのまま、アイリスは意識を手放した。


―…