本と私と魔法使い

そっとアイリスの部屋を除くと、ベッドで静かな寝息をたてていた。


「あららー」

「アイリスは、なんだか眩しいわ。あたしをとても大切にしてくれているの…。もちろん、アルザも。」


「僕もちゃんと大切にしてますよ?」

「あんたはくえないからなぁ」


酷いなぁ、と笑った。
彼が一番大事にしているのはアイリスだ。多分彼女がいて意味をなす世界に彼はいるのだろう。ある意味アーベルと同列なのかもしれない。

今も、あの灰の目は何をかんじているかわからない。

「まぁ、優先順位で動く男ですから、優男じゃないんでね」

多季が愛おしそうにアイリスに手をかけると、ゆっくり目を開いた。


「ふ…、ん、あれ?…どう、なさったんですか…?」


「寝顔を見にね」

多季の言葉に真っ赤にして口をぱくぱくさせた。
サリサはその様子に笑いながら、ひと足先に部屋を後にした。


「な、になさろうとしているんですか!!あなたは!!夜更けですよ…」

多季が仰向けの状態のアイリスを跨ぐ。ベッドが重さでぎしりと軋む。


「いや、アイリス、こんな夜更けだからこそやることは一つでしょ?」

「だっ!!あなたはどうして…それしか頭にありませんの?」

「まぁまぁ、男なんてそんなモノですよー、」


ほらほら、と言いながらアイリスの服を脱がす。
アイリスはダメだって言ってるでしょ、とごんっと多季を殴る。

「やだ、アイリスちゃんったら、グーで殴ったわー。そんな子に育てた覚えないのにー」


そう言って茶目っ気たっぷりに怒る。中世的な声にその口調がよく似合う。