本と私と魔法使い

「本当に好き。オレだって、いろいろ初めてだけど」
「嘘つき非童貞」


私が恨みがましく呟くと、そこは否定できないけど、と笑っていった。

「好き」


掴まれた手が熱くて、ちりちり痺れるみたいだった。
「わ…かんないよ…」


特別な存在だと、わかっていても、それがどんな間柄を示すものか判断できなくて、もしかしたら、兄妹としてかもしれない、恋人のそれかもしれない。

決めれなくて。


私が何も言えず黙り込んでしまうと、

「わかったよ、急かさないから、…ゆっくり考えていて」


ぽんぽんと優しい手が私を撫でた。
私はその優しさに甘えて頷いた。


「今日は仲良く家族みたいに手を繋いで帰ろうか」

私の手をすっぽり和泉の手が包んだ。


「うん」

振り払わずに、私は優しく握り返した。


まず、お父さんと話をつけてからだ。
私は月が浮かび始めた空を見上げた。



――――…
―…
―――…
――…
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