本と私と魔法使い

「…そんなに、顔にでてたかなぁ…」

私は羽津を見上げがちに言うと、まぁね、と笑っていう。

「かなり。なんか、すごく考え込んだ顔してて、無理してるなぁって思ったもん」


恥ずかしくなって私は目を伏せた。綺麗な目がこちらを伺っていてとてつもなく気恥ずかしい。
私は杏果さんが出してくれたジュースを飲みながら、

「よ、…よく見てるんだね…羽津は」


「そんなことないよ、…和泉さんだからだよ」

「はっ!?」


その言葉をびっくりしすぎて理解できず、飲んだジュースが気管に入ったのかむせる。
すると、私のその様子を見てけらけら笑いながら、

「嘘だよー」

軽く言ってくる。
く、くそ。

赤面しながら、私はきっ、と睨み付けたが涼しい顔をして楽しそうに笑った。


「はいはい、二人ともー、ケーキのお通りよー」

よく通る杏果さんの声が響いた。


「わーっ!!すごい美味しそう…」

だたのシフォンケーキ、でも粉砂糖で模様が描かれて、凄い可愛い。


「今から魔法をかけます」
杏果さんはにっと人差し指を口にあて、笑っていった。
白いクリーム、桃色のクリームを花のようにしぼりだし、そしてラズベリーソース、で彩ってゆく。
最後にアラザンをぱらぱら落とした。


「すごい…!!可愛い…」

「シフォンケーキを甘さ控えめにしてあるから…まわりの生クリームとかにつけて食べてねー。じゃ、ごゆっくりー」


杏果さんがデコレーションは食べるのが勿体無くなるほどだった。

しっとりとした甘く優しい味がして、興奮して羽津に言う、


「すごい美味しいっ…。いいねー、あんなお姉さん」
「わりと凶暴だけどなー。…ど?元気でた?」


目の前に座る羽津が私に手を伸ばし、髪をすくいつつなでた。
鋭さのある瞳が優しくなる。


「何に悩んでるか知らないけど、だいじょーぶだよ」