本と私と魔法使い

「あー…」


私は息とともに声を出した。 あんなところを宗一さんにみられたら、そりゃ出てくるしかないだろう。

コンビニに入ると、なんとなくゼリーが食べたくなって私は棚を見た。
みかんゼリー、コーヒーゼリー、黄桃ゼリー…
いっぱい種類があり、目移りしながら見ていく。


「なにしてんのー?和泉さん」

「ぎゃっ…」


急に耳元に息と共に声が降ってきて、驚きに身を竦めた。振り返ると気だるげに手をあげる羽津がいた。

「羽津っ!!びっくりさせないでよ…」

「ゼリー買うの?」


ぼんやりと視線を私から私が見ていたゼリーの棚へ移した。相変わらず一連の動作が気だるげだし、めんどくさそうだ。

「まぁね…このコンビニ良く来るの?」

「ん、家が近いからねー。」


おっと、会話終了か…。
羽津はなんだかワンテンポずれていて、話しづらい。ふと羽津を見やる。
相変わらずかっこいい顔してるなぁ…、と思った。和泉は端正…っていうのかな、
正統派だとかそういう言葉が似合う。誰が見ても綺麗な顔、美しいと思う。

羽津は、クセが強い和泉とはいわば対照的な顔。
黒い鴉みたいなつやつやした髪、何を考えているのか全くわからない目がなんとなく恐い。



「近いっていうのも…あるけど、…なんていうか、重いコトじゃないんだけど…家から出たかったんだよねー…」

もちろん、見られて恥ずかしかったのもあるけど、なんとなく家をでて考えたかった。

ふぅん、とおもしろそうに笑い、羽津は、


「じゃあ、おれと来る?」

え?どこに?
にやりといたずらっぽく笑い羽津は私の腕ひっぱっていった。