本と私と魔法使い

楽しそうに邪気なく笑う父さん。

「そんなのおかしくない…?」


脱力しそうな衝撃の事実に、おいおい、と俺はボヤきたくなった。
もっと早くに知らせてくれよ。

「愛って一つじゃなくていろんな形があるんだよ…だから難しい。要するにね、幸せだったらいいんだよ。それが正解。」


また楽しそうにお茶を飲み、旨いと笑った。

「…ハルはちゃんと幸せかな?」


「当たり前だろ…」

小さく呟いた。その呟きに満足したように父さんは笑った。


「俺は、…父さんの子供なんだから」


―…

「いやー、参ったね、君まで出てくるとは思わなかったよ」


裕司は目の前の女性にいつものように人当たりの良さそうな笑みを浮かべた。

「佐恵子、」

「元奥さんに会うのってどんな気持ち?」


呼び掛けられて、ふふふ、と笑った。

「いや、少なくとも、街で偶然ねー、とか言って近くの喫茶店に引っ張られたら誰だってびっくりしますけど!!」


裕司のペースを壊せるのはこの世で佐恵子しかいないだろう。
おっとり笑いながら、


「だって咲音があなたに会うっていうのよ?気になるじゃない。…あの子に聞いてもちゃんと答えてくれないだろうしぃ」


あなたのおごりねー、と佐恵子はチョコパフェを食べながら笑った。

「ふつーに一緒に住まないかっつっただけだよ」

「そーなのー」
「それだけか」


ん?と裕司をみながら、それだけって、やだ、反対して欲しかったのー?と笑う。


「そーいうことじゃないけどさぁ…」

「じゃあ、どういうことよー?あなたは肝心な所で言葉がないから嫌なのよ。」
佐恵子はパフェについている細いスプーンを振り回した。