本と私と魔法使い

「宗一さん!!」
「父さん」


今の抱きしめられてる状態をみて、ん?という顔をし、

「あれ?…どう、いうことかな…?」

ちょっと理解できない、という顔をした。目鼻立ちが整ってるから、そういう顔も素敵です。
…って、それどころじゃなくない!?


「あー、…咲の頭についたごみとってたんだー」

「あぁ、そうか!!」


和泉の返事に納得という顔を見せた。
いや、ちょっと、そんな状態じゃないでしょ…。

「私、ちょっと外に出てきますね」

なんとなくいづらくなってもう一度外に出た。

―…


「父さんがこんなに早く帰ってくるなんて珍しいね」
「案件が早く片付いたんだ」


ネクタイをゆるめ、リビングに入って椅子に腰かける。

「父さんはさー」
「んー?」


「なんで、僕を引き取ったの?」


聞けなかったこの疑問を口にした。
俺をもう一度見て、ちょっとびっくりしたような表情をする。


「驚いたな…、聞いてくるなんて、ハルはその事について避けているように思っていたから」


知ってたか、と俺は思いながら、父さんの前にお茶を出す。ありがとう、とそれを受け取り、一口ふくんだ。



「愛かなぁ、」

「はっ!?」

まさか一言目からそんな突飛な答えが返ってくるとは思わなかった俺は思わず聞き返す。


「香苗さんは、僕にとってある種の運命の人だから。…お見合いで結婚して、彼女は私を愛せなかった、…でも、僕は愛した。彼女が愛した者を僕は変わらず愛せるよ、だからハルを愛せる」


ね?と笑った。それに、親戚連中には秘密だけど、と幼く笑う。

「香苗さんが駆け落ちするのは僕も知っていたよ。でも、一つ提案をした。それはハルが小1になるまで待つこと、ハルを置いておくことってね。未練がましいことかも知れないが、彼女の全てがなくなるのは、耐えられなかったんだ」