約束の喫茶店に入ってみるが、まだお父さんの姿は見えない。入り口から見易い位置に座り、オレンジジュースを頼む。

「先に着いてたんだね」

「お父さん」


ふぅとため息をつきながら、私の目の前に座る。
最後に会ったのは、お母さんが離婚した三年前から会っていない。

少し、老けたな。
そんなことを思いながら、見ていると、

「なーに、こっち見てるの?」

にやにやしてくるので、私は冷たい目で見返す。

「もう咲も高校生になったんだね」


そんなことも気にしない様子でわしゃわしゃ私の髪を撫でた。
毎回ペースを乱す人だった。


「…佐恵子、結婚したんだってね」

「知ってたんだ」

「まぁね。相手にも子供がいるらしいけど、仲良くできてる?」

「それが、どうしたの?…何が言いたいの」

店員さんが持ってきたオレンジジュースの氷がからんと音をたてて溶けた。

簡単に言うとね、とよく通る声でお父さんは言った。

「一緒に住まないか、ふたりで。」

「…なんで、今更」
一口のんだオレンジジュースは少し苦かった。